辺境発のオピニオン


by karatsuzine

決め手はIQ?自民党の選挙戦略

 ご存じの方も多いと思うが、2005年6月23日の郵政民営化特別委員会で民主党の中村哲治前衆議院議員が提出した質問(議事録)、そして資料について少し触れたいと思う。

 ここでは郵政民営化の広報チラシを請け負ったスリード社が作成したあるグラフが論点となった。小泉政権の支持層を分析するグラフである。
 資料によると小泉首相の支持層を、「具体的にはよく分らないが、小泉首相のキャラクターで支持する層」と分析している。そして彼らを低IQ層として定義し、主婦層、シルバー層、子供層を中心としたこの層へのアピールを強化すべきといったものであった。
 ここで一つ指摘したいのは、彼らを”低IQ層”ではなく”政治的関心の低い層”として定義すべきであり、知能指数を測る指標であるIQを用いる事は極めて不適切であると言う事である。
 政治的関心の低い人々を、低IQという言葉で分けるという姿勢に問題があるという事だ。

 しかしなぜ今になってこのような事を持ち出すのかというと、今回の自民党の選挙戦略がこのレポートに沿って為されているのではないかと考えられるからである。

 4年間の政権運営を誰に任せるかという意味を持つ衆議院議員選挙においては、マニフェストにおいて政策を多面的に述べるべきである。
 しかし自民党は、郵政民営化イエスかノーかの単純な二択の選択を示しているだけである。社会保障改革、地方分権、財政再建等、他の改革については郵政民営化が入り口となると述べるだけで、その具体論は全くといって良いほど示されていない。

 むしろ郵政民営化さえ行えば後は全て上手くいくといったような、根拠のない郵政民営化万能論が全面に押し出されている印象は否めない。失敗した改革の総括もせずに、どうしてその改革が上手くいくと言うのだろうか?
 言うまでもないが、郵政改革と他の改革は少しは関連するものの、全く別の分野であり独自の法案が必要である。この分野について抽象的な一般論のみを述べるような姿勢では、”郵政民営化だけはするが、他の改革については前向きに善処します”、と言っているのと同じである。

 過去の失政の部分については情報を隠し、政府にとって都合の良いものだけをクローズアップする。しかも論理を○×形式で極度に単純化し、各論についてはほとんど触れない。与党の説明責任という点で誠意のかけらもないこの姿勢は、普段政治と関わる機会の少ない”政治的関心の低い層”をターゲットにしている事は間違いない。

 今まで政治に無関心だった人々を、どうやって自分達の支持者にするか。その点では今回自民党の戦略は成功したと言える。
 しかし政策云々よりも支持者が増えれば良しとするその姿勢では、マトモな政治が行われないのは明らかである。キャッチコピーだけで人を引きつけ、中身がほとんどない。これでは質の悪い商品を誇大広告で売り出すようなものである。
 このような手法は、企業が利益の追求という形で用いるには許される(決して好ましくはないが)かもしれないが、国民全体の生活に関わる政治という分野においては決して許されるものではない。

 ここで最も懸念されるのは、こういう手法が受け入れられるという前例ができてしまうと、このような手法が今後の政治の中で定着してしまうのではないかという事である。
 ブッシュの戦争、ナチスの台頭、そして軍部の暴走。こう書いてしまうと少し大袈裟かもしれないが、これらはみな大衆の支持が力を与えた事を忘れてはならない。
 権力の暴走は大衆の支持無くしては成立しないのである。そしてそこでは分りやすく理想的なスローガンを表に掲げ、裏の重要な部分には目をつぶらせる手法がとられていたのである。
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by karatsuzine | 2005-09-10 01:06 | 政治