衆議院選挙の投票日が近づいてきた。二大政党制という観点から今回の選挙の意味を考えると、自民・民主がそれぞれ示している改革路線のどちらを支持するかというところにあると思う。
そこで両党の路線と問題点を再確認してみたい。政権与党である自民党については、その実績についても触れるので多少分量が多くなる。
まず与党である自由民主党の案についてだが、改革路線の重点は郵政民営化にあるという立場を基本としている。
郵政民営化による効果の一方で、我々は成果のあまり上がっていない分野についても注意しなければならない。年金制度の見直しや、地方分権の促進を目的とした三位一体の改革、そして財政再建。取っ替え引っ替え話題には上ったりはしたが、ここでは残念ながらこれといった成果を上げ切れていない。今回の選挙に当たっても総論ばかりが目立ち、今のところ具体的なビジョンは示されていない。
年金制度に関しては制度の一元化、議員年金制度の廃止について将来実現するという程度で、時期に関しては具体的にはほとんど触れていない。会見においてもこれから議論するといった感じで、事実上先送りの姿勢を取っている。将来問題となる年金財源についてもほとんど触れられていない。
地方分権に関する三位一体の改革においては、補助金削減のみが優先されて行われており、地方の自立に欠かせない交付税を始めとする財源の移譲はほとんど進んでいない。
財政再建の分野においても、税金の無駄遣いが指摘される公共事業・特殊法人・公益法人等での歳出抑制は小規模にとどまっている。その一方で社会保障分野での歳出カットは着実に行われている。
事実、官の無駄遣いの資金ルートを遮断するという意味で、郵政改革は非常に重要である事は間違いない。しかし数ある改革分野の中の一つでしかない郵政民営化だけを行うという事では、もちろん不十分なのである。郵政民営化だけを前面に押し出して、そのほかの部分は具体的には殆ど触れないといった姿勢では、他の分野の改革については興味、もしくはやる気がないのではないかと疑われても仕方がない。
新聞広告では郵政民営化が為される事により、これらの問題も全て解決するといったような多少乱暴だと感じられる図式も示されている。確かに郵政民営化はこれらの問題に多少影響を与えはするが、最終的に改革を進めるのはそれぞれの法案である。
これでは郵政民営化は”改革の本丸”というよりは、他の分野で遅々として進まない改革の穴埋めを目的とした、いわば”改革の最後の砦”という印象をぬぐう事はできない。
そして首相の改革の方向性だけを総論として示し、各論は官僚に丸投げという姿勢は副作用として官の肥大化を引き起こしている。官僚の天下り先となっている場合が多い特殊法人・公益法人の改革が、官僚に政策を丸投げしている中でドラスティックに進んでいくとは考えにくいし、事実この分野の改革はほとんど進んでいない。社会保障削減もほとんどが官僚によって作成されたものである。
一方、もう一つの改革路線を取る民主党の案であるが、マニフェストを見る限りでは目標の日程・数値など具体的に記してあり、与党の案よりも一歩踏み込んでいる印象がある。
年金制度の一元化、議員年金の廃止を明記しているだけでなく、財源についても年金目的税としての消費税の導入など、年金制度のあり方についてある一定の具体的なビジョンを示している。
地方分権においては、自治体の裁量で自由に使える交付金だけでなく、行政上の権限も徐々に移譲するといった財政以外の面での分権に関してもしっかりと触れている。
財政再建においても、3年間で10兆円の歳出カットを筆頭に、国債発行額を30兆円に抑えるという具体的期間・数値が示されている。
そして肝心の郵政改革においては、預金量の上限を引き落とし、資金自体を減らすという姿勢を取っている。これは資金の出口を縮小させる効果も十分に期待できる。そして膨大な資金を抱えさせたまま民間にその資金を移すよりも、私はむしろ着実であるのではと思う。
民主党の改革案は様々な分野で具体的に記されており、一般論に終始した印象が強い自民党の案よりも改革への姿勢を鮮明にしている感がある。しかし野党という立場である以上、現在の責任政党である自民党の案と比較して単純に優れているという事はもちろんできない。問題となるのはその実行性である。
しかし実行性はともかく、改革案に関して具体的なビジョンを公約として明記している姿勢は評価に値する。仮に政権を取ってそれが実行できなかったとしても、単純な話国民を欺いた政党として政権から転落するだけである。政治的空白を懸念する人もいるが、財政改革が急務とされている今、改革の停滞は政治的空白と同等なのではないかと私は思う。
二つの改革路線。どちらが国民に選ばれるかは9月11日に明らかとなる。